自分の中に毒を持て【本と私③】
こんにちは!
作業療法士のOがお届けします【本と私】、このシリーズは私の心をわし掴みにした書籍たちの紹介です。きっちりしたレビューは無理なので、ゆるーい内容になりますが、もし興味が湧いたらぜひ読んでいただきたいと思う書籍を選んでおります。(AmazonやYouTube、その他サイトへのリンクを使用しておりますが、アフィリエイト等ではありません)。
さて、前回強烈な破壊力を持った文章で予告しておきましたが、今回紹介したいのは‥‥
これです。これなんですが、長らく ”未熟を決意せよ” と書いてあったと勘違いして覚えていて、未だにこの文章を読むときは、’決意せよ’と読み替えてしまうのでした。
”ぼくに言わせれば、弱い人間とか未熟な人間のほうが、はるかにふくれあがる可能性を持っている。‥‥そこへいくと、未熟というものは運命全体、世界全体を相手に、自分の運命をぶつけ、ひらいていかなければいけないが、それだけに闘う力というものを持っている。‥‥
自分が未熟だからと消極的になってしまったら、未熟である意味がなくなってしまう。‥‥”
私ももちろん、熟達するということに憧れます。憧れどころか強烈な欲求があります。
例えば、作業療法士として、リハビリ専門職として、医療人として、社会人として、人間として、もっともっともっと熟達したい。でも、どんなに練習しても、鍛えても、稽古に通っても、勉強しても、論文を漁っても、本を読んでも、自分が目指すところに全く届く気配がない、悲しみひとつ乗り越えられない‥‥、なんでいつまで経ってもこんなに情けない、何もできない人間なんだろう。
そんなふうに落ち込んだときに、未熟であることを決意しているからこそ、情熱が、エネルギーが満ちあふれてくるんだと、勇気づけてくれるんです。
この言葉を支えに、全く上達する気配をみせないような苦手なことでも挑戦し続けることができる、弱々しい自分の性根も少しは認めて成長を目指すことができる、私にとってはお守りのような言葉になっております。
ところで、岡本太郎さんは「芸術観――アバンギャルド宣言」(改造1949年11月号)で、
この雑誌のデザインかっこいいです。現在この刊は手に入りませんが、 アバンギャルド宣言は呪術誕生(1998年12月発行)で全文を読むことができます。 |
”これからのアヴァンギャルド芸術の精神には、非合理的なロマンティスムと、徹底した合理的な構想が、激しい対立のまま同在すべきである。‥‥便宜上、私はこれを「対極主義」と名付ける。引き裂けば引き裂くほど、両極相互の間の緊張は絶望的に強まり、そこに激しい火花が散る。‥‥私は絵画表現によってそれを具体的に提起したい。まず、考えられることは、矛盾する二者の、矛盾したままの同時描出である。”
甲野善紀先生と同じようなことを言ってるー!!と私の気分が激しく高揚したことは言うまでもありません。ただし、甲野先生の場合は ’矛盾を矛盾のまま矛盾なく’ ですが、太郎さんは ’対立させる’ と。おもしろいですねー。こうやって、好きな本の著者同士の似ている主張、全く異なる主張を比較するのも、本を読む楽しみです。
甲野先生は甲野先生で、【本と私②】で紹介した ’自分の頭と身体で考える’ の中で、
”私は個人の美意識こそ、最も尊重しなければならないものだと思っていますから”
”人の美意識を鈍らせてしまうのが一番こわい。その人がその人であり続けるのは結局は美意識しかないと思いますから”
”‥‥私は「何とかが正しい」と言うつもりは全然なくて、自分が「これに殉じたい」と思うかどうか、「それに美を感じるかどうか」ということしかないと思うんですよ”
【本と私①】で紹介した福岡伸一先生も、著作をみればわかるとおり、生涯をかけて生命とまっすぐに向き合っていらっしゃいます。私は生命もしくは死とまっすぐに向き合っている人たちが好きだというのは間違いなさそうなのですが、生命もしくは死と向き合うことは、例えばそこから何も見つけられなかったとしても、それだけでエネルギーが湧いてくるんじゃないかと思えてくるのでした。
さて、次回紹介する本ですが‥‥、自分の中に毒を持ては強すぎて、弱っている時に読むと打ちのめされてしまいます。というか、私は打ちのめされてしまいました。なので、かなり弱っている時に自分を支えてくれた本にしようかなーと思っています。でも、気が変わるかもしれないです。すみません。
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